南九州地方(熊本・宮崎・鹿児島)の駅弁
※福岡・佐賀・長崎・大分の駅弁は「北九州地方の駅弁」に移転しました。
鹿児島本線:熊本駅 「中華弁当」(音羽家) ¥840

熊本駅の駅弁の中で、「趣向を凝らしている」と言える駅弁の中で、通年買えるシロモノの代表としておこうか。熊本駅弁の名物に「あさりめし」があるが、ここ最近の不漁で長らく販売が休止されていたらしい。新幹線の槌音が聞こえるにあたり復活したとのことだが、夏場は販売がない、とのことで、これ以外あまり手を出してみたい・・と思わせる趣向の駅弁がなかった、というのが実感。
中華風の駅弁なので、一通りの肉料理を、比較的安いコストパフォーマンスで味わうことができるのだが、長崎ならまだしも、熊本と「中華料理」の結びつきがわかりづらいのが苦しいところ。
鹿児島本線:熊本駅 「SL弁当」(音羽家) ¥480


熊本〜阿蘇〜宮地間、「あそ高原線」を17年間に渡り結んだ、<SLあそBoy>にちなんだ駅弁。SLが引退した今、この駅弁がどうなったかは定かではないが、さすがに引退間近では「完売しました」の掲示が出ていた。駅弁そのものは元々、阿蘇方面のピクニック向けに開発したと思われるようなコンパクトな内容で、特に趣向を凝らしているようにも見えないが、掛け紙を付けるだけで、「大人気駅弁」に変身させるところが面白い。
「趣向がない内容」と記したが、その分当たり外れのないものを入れているのも確かで、こういった凝ったコンセプトの駅弁にしては、¥500を切るのが好印象。新山口の「SL弁当」などと比べるとはるかに食べやすくうまい。
熊本駅には、駅ウラに車庫があり、由緒あるレンガ車庫が人気を呼んだが、九州新幹線を迎えるに辺り車庫が一足先に移転。駅ウラはこれから大きく変わることとなろう。駅前からは「日本初の超低床路面電車」が発着する。
九州新幹線・鹿児島本線:新八代駅 「鮎屋三代」 (頼藤商店) ¥1,050


九州新幹線開業と同時に誕生した、新八代駅の駅弁。八代で明治の代から球磨川で獲れた鮎を売り歩いていた店が、1年がかりで開発したとのこと。二代目が「焼鮎」と「甘露煮」の製法を頑なに守り、そして三代目に受け継がれて現在へ・・ということから、この名称が付けられたとのこと。
最初この駅弁の話を聞いた時、最近時々見られる、「新幹線開業の話題作りに、地元の仕出し業者に、駅弁の開発を依頼したんだな・・」程度に感じていたのだが、徐々に力を付け、2005年8月に購入した際には、なんと掛け紙に「駅弁マーク」が刷り込まれていた。九州では数年前に、加盟業者が反乱を起こし、現在中央会に加盟しているのは鳥栖と小倉、そしてここだけ。そういう時代にシッカリとこう言った道を選ぶ・・というのは、相当な覚悟と同時に、それだけ駅弁の実力が高いという証拠である。
そのせいか、九州で行なわれた「九州の駅弁」キャンペーンの投票ランキングでも堂々1位になるなど、評価がウナギ上りに上がっている。私も実際に食べてみたのだが、一口食っただけでぶっとぶようなうまさを体感。魚系統の駅弁をあまり好まない私なのだが、甘露煮の鮎も柔らかくて非常に食べやすく、炊き心地の良い炊き込み御飯との相性もバッチリ。中部以西の「翌日にクール便で届く」場所に限り、通信販売も可とのこと。今のところ、熊本県の駅弁の中では他の追随を許さない名作、と断言しておこう。言うまでもないが、文句なしの「究極のVサイン」駅弁。
新八代駅はご存知の通り、在来線<リレーつばめ>と新幹線<つばめ>が同じホームで3分で接続する方式のため、駅改札口近くの「キヨスク」に降りて買うヒマがないのが残念だが、あまりのシロモノなので、そうしてでも手を出す価値充分の一品。この界隈に来たのなら、何が何でも手を出してみたい。
当初から「在来線ホーム」に発着する<九州横断特急><くまがわ>の一部列車の車内販売に搭載されていたが、現在では<リレーつばめ>の一部列車にも積み込まれるようになり、より買いやすくなった。なお、新幹線<つばめ>は、所要時間が短いため、車内販売はない。新八代駅のほか、八代駅のキヨスク、「くまもと阪神」の店舗などでも購入できるようだ。ちなみに本店は、八代の駅前にある。
九州新幹線・鹿児島本線:新八代駅 「阿蘇赤うし弁当」 (頼藤商店) ¥1,000

2005年の8月頃に出来たらしい新作。<あそBoy>が引退間近の、熊本駅のホームで台売りしていた品を購入。鮎をメインに商売してきた店が、熊本県の名物とは言え、畑違いの食材を使った新作を出すと言うのは、よほどしっかりしたノウハウがある証拠である。もちろん肉が好きな私も惚れ惚れする内容で、だてに「鮎屋三代」の評判がすばらしい駅弁屋のシロモノではない・・と感じさせるほどだった。
「かしわ」系統が多い九州において、牛肉がメインの駅弁があまり多くない上に、ここ数年BSEの騒ぎで牛を使用した駅弁が受難の中、果敢に挑戦したことが素晴らしい。ただ、電子レンジで温めるか、ぶっちゃけ加熱式にすれば、もう少しおいしくなりそうな気がする。
参考:豊肥本線:阿蘇駅 「SL弁当」 ¥800

<あそBoy>が引退する前日の、2005年8月27日に阿蘇駅ホームで購入。写真では見えないが、掛け紙の上部に「17年間ありがとう。感謝をこめて・・」というメッセージが刷り込まれている。引退が近づくにつれて発売したようだが、「先日は大量に余ってしまった・・」と見込み違いをぼやいていたものの、この日は用意した30個、見事に完売だったようだ。
筆者はこの手の「××記念弁当」の類は、一過性に終わることが多く、紹介しても皆さんが入手できないため、基本的には紹介しないし、あまり買うこともない。ただ阿蘇駅と言う地でホームにワゴンを置いて販売する姿を見て傍観するのもためらいを感じたこと、「地元の経済への貢献」も考えて、1つ相伴させていただいた。内容は御多分にもれず、「駅弁」の範疇ではなく、「仕出しのノウハウのような弁当」であるが、何も飾らない素朴な味が、この土地の文化を示しているように感じた。
阿蘇駅は阿蘇山を遠くに見上げる場所に位置し、1918年に「望中駅」として開業した駅を、1961年に改称。阿蘇山からは離れた場所にあることから、阿蘇山観光のメインアクセスは観光バスなどで、阿蘇山観光に列車を利用する人は限られているようだ。駅も委託で、指定券を発券するコンピュータも設置されていない。
しかし阿蘇山は文字通り「世界的な観光地」で、特急がこれまた世界的に有名な温泉地、別府を直結するからか、「ジャパンレールパス」などを使用した外国人の利用が多い。そのため駅の時刻表には通常のと同じ大きさで、英語版の時刻表が掲げられているのが大きな特徴。駅前の潰れた旅館が、阿蘇山の景色を台無しにしているのが遺憾だが、ウエスタン風の駅舎のフンイキはすばらしく、3分ほど歩くと市営の公衆浴場もある。
なおこの駅弁は、恐らく販売を終了したと思われること、このページを見た人が「非常識な要求」をしたりする人がいないようにするため、この駅弁に限り販売業者を記載しないこととする。
肥薩線:人吉駅 「鮎ずし」(人吉駅弁 やまぐち) ¥890

人吉は、発着する特急列車の愛称にもあるとおり、球磨川沿いの盆地に切り開かれた城下町。温泉があり、「球磨川下り」など、観光資源に恵まれながらも、熊本市内や阿蘇と比べると、熊本県内では比較的穴場の観光地と言えようか。
人吉駅には様々な駅弁が用意されているが、比較的買いやすく、名物駅弁の1つが、この「鮎ずし」。球磨川で獲れた鮎の下に酢飯を載せ、タップリの醤油で食べる、シンプルなシロモノ。
後発の新八代の「鮎屋三代」と比べると食感が劣る感が否めないが、長年の駅弁屋の伝統が、シンプルな形態を守っていると言えようか。価格は圧倒的にこちらの方が安く、特に気をあしらった部分がないのも、駅弁屋の駅弁らしい、と言えようか。
ここの駅弁が特筆されるもう1つの理由が、写真の菖蒲豊實(しょうぶ とよみ)さんがかれこれ35年以上、この人吉駅のホームで立ち売りを続けられていることで、すっかり有名になった。
急行<えびの>の廃止などで「姿を見ない」という声もチラホラあったようだが、九州新幹線開業後の、観光列車の運行開始もあって団体客などの姿や駅弁利用が増えたせいか、この日は一応の定休日だったにも関わらず、特急が出るホームで販売をなされていた。
急行が特急になり、窓が開かなくなったので、このスタイルでの販売が難しい環境はあるが、その<九州横断特急>は、ここを起点に熊本と阿蘇にバッチリ立ち寄って、終点はこれまた世界的な温泉都市、別府とあって、観光に大変便利な存在となっている。いつまでもお元気で、旅人を和ませてほしいと思う。
肥薩線:人吉駅 「栗めし」(人吉駅弁 やまぐち) ¥890

「鮎ずし」が苦手な人には、素朴な「栗めし」もある。もち米風の炊き込み御飯の上に栗やひじき、エビなどを載せ、ごぼうちくわや卵焼き、レンコンなどを入れている。
こういう弁当の内容はどことなく、「ハデな飾り付け」はしない・・という文化の表れなのかも知れず、言うならば「基本に忠実」な、栗めしに仕上げられていると言えよう。価格は同じ¥890、「1つしかよう買わん」と言う人は、「すし」か「めし」かで好みのほうを選ぼう。
なお、立ち売り担当の菖蒲さんが、万が一お休みでもガッカリすることはない。駅を出た左横にご覧のような大きな調整所を構えており、「汽車弁当」という看板を掲げて商売している駅弁屋自体が、今時ほとんどない。これを見るだけでも、「人吉へ駅弁買いに来てよかった・・」と、苦労が報われると思う。
ちなみに、人吉駅には「麦とろろめし」と言う、マボロシの名品もある、と言う話を聞いた事があるが、これは比較的最近開発されたらしい。前記の3品以外は予約が無難かも知れない。
肥薩線・吉都線:吉松駅 「幕の内弁当」(駅弁 たまり) ¥820


「吉松駅鉄道構内営業」が正式社名。屋号の「たまり」は、駅弁屋の主が「玉利さん」のためのようだ。1903年(明治36年)に開業した吉松駅は、1909年(明治42年)に人吉からの線路がつながって「鹿児島本線」として(現在の肥薩線が)全通。3年後には「宮崎線」(現在の吉都線)として宮崎までの線路(当時日豊本線はなかった)がつながり、吉松駅は鹿児島と宮崎への線路を分ける、重要な拠点だったらしい。そのため駅にはかつて機関区があったそうで、現在でも2面4線のホームのほか、駅舎側にも使われていないホームがある。
現在の鹿児島本線や日豊本線の開通後は、さすがに苦戦を強いられるようになったようだが、それでも1974年には、当時気動車キハ82で運転していた特急<にちりん>の間合いで、吉都線・肥薩線経由の特急<おおよど>が設定されていた。<おおよど>は<にちりん>が電車化されたため6年で運行を終えたものの、熊本行の急行<えびの>が、都市間輸送の任務に当たった。
JR化後の1989年にはこの<えびの>の一部が博多まで延長され、キハ58にリクライニングシートを装備して好成績を収めた。しかしその栄光は長続きせず、直後に宮崎自動車道が完成。高速バス<スーパーフェニックス>の前に、<えびの>はおろか、北九州経由の<にちりん>すら大苦戦を強いられ、<つばめ>など鹿児島本線の特急整備が進むと、<えびの>も途中で道を譲るようになり、93年に熊本発着に戻された。
95年には都城〜宮崎間を快速とし、キハ58も「シーガイア」をイメージした塗装に改めたが、もはや勝負は完全に決しており、「シーガイア」そのものの不振も手伝い、2000年に<えびの>を廃止。吉松駅に優等列車が来なくなった。それと同時にどことなく、「忘れ去られた」感じの場所になってしまい、時刻表からも「弁」マークが消えてしまうなど、苦境が続いた。
それでも駅弁はほそぼそながら生き続けたのは、旅行者の根強い需要もさることながら、駅員さんや列車の乗務員の注文もそれなりにあったため、らしい。鹿児島県の山あいでは、駅周辺の外食産業も限られているのだろう。と言っても間違っても、「賄いの弁当が、駅弁になった」ということではなく、それなりのシロモノであることは言うまでもない。
中身は「普通の幕の内」で、肉の細切れと、焼き魚の代わりに天ぷらと「にがり」が入れられているのが特徴。味を語る以前に、「本当に今までよく、駅弁を守り通してきたなあ・・」と思うだけで、ジーンとさせられる一品で、たっぷりのボリュームで勝負、と言うところか。「うま〜〜〜い」・・と言ったりはさすがにできないが、もちろん「買ってよかった」と思えるだけの味と、何よりもフンイキが、この駅弁に有る。
長らく不遇を買ってきた吉松駅は、2004年の九州新幹線開業で、「観光列車」が整備された。肥薩線の霧島西口駅を「霧島温泉駅」に改称し、アクセスバスを整備。そして築100年を迎えた古い駅舎が残る「嘉例川」と「大隅横川」の両駅そのものを「観光資源」として売り出し、これらの駅に停車する特急<はやとの風>を、鹿児島中央から2往復させだした。また「地元の利用客」がほとほとに少ない「矢岳越え」の人吉行普通の一部を<しんぺい>として、「日本三大車窓」として名高い景色を楽しめる工夫を凝らした。
こう言った努力が功を奏して観光利用が増え、1〜2両の短い列車、特急言えどもワンマン運転ながらも、吉松駅はすっかり息を吹き返し、シャッターを閉ざしていたホーム売店も活気付いた。ホーム売店は基本的には週末だけの営業のようだが、8月のこの日は団体客もいたせいか、14時すぎの普通の客に、「立ち売り」で販売している光景に出会えた。キハ40は窓が開き、古びたホームや売店も、大して手を加えていない・・・、以前は日本のどこででも見られた「懐かしの光景」が、ここ吉松で展開されたことに、旅行者として感動を憶えてしまった。
確実な購入には予約が無難かと思うが、感動を憶えたら迷わず手を出してみよう。「立ち売り」に出会えたら、キハ40の窓を開けて買ってみたい。
肥薩線:嘉例川駅 「百年の旅物語 かれい川」(森の弁当 やまだ屋) ¥1,050

九州新幹線と観光特急<はやとの風>デビューを記念して、開業日の2004年3月13日に、1日限りで販売された駅弁。「1日限り」と言うのが予めアナウンスされていたため、文字通り「マボロシの駅弁」として注目され、掛け紙がネットオークションで取引されたほどだった。あまりの反響のせいか2ヵ月後、駅前の物産館で販売されるようになり、その一ヵ月後には金・土・日に限り、<はやとの風>の車内販売でも扱われるようになった。
現在では、土・日は現地で、金曜日は<はやとの風>車内で販売されるが、積み込み個数が10個程度と少なく、「タイミングよく」注文しないと乗車区間によっては入手できないこともある。月曜日は定休日で、火・水・木曜日は予約分のみ対応とのこと。
内容は時期によって若干変化があるかも知れないが、この日の内容は
ご飯・・・・・竹林に囲まれた嘉例川駅をイメージし、町内の棚田で取れたかけ干し米に、嘉例川の方が原木で栽培した椎茸とタケノコを炊き込み。
おかず(ガネ)・・・鹿児島特産の紅さつまの天ぷら。野菜の水分だけで作り、揚げたもの。ちなみに鹿児島弁で「蟹」のことを「ガネ」と言うそうな。もちろんこれには「カニ」は使用されておらず、揚げあがった形が「カニ」に似ているため、この名前が付いた、とのこと。
この他の内容は、嘉例川地区に豊富にある野菜の中から、千切り大根とコンニャクの煮物、同じく椎茸とタケノコを混ぜ込んだコロッケ。それにみそ田楽と酢物・・という内容。炊き込み御飯の風味と食感は絶妙で、「これが駅弁か・・!」と唸らせる内容と、手の込んだ丹念な調整が、食欲をそそる。当たり前のことだが、これだけのシロモノが「一過性」で終わってしまうことはもったいなく、「九州の駅弁」キャンペーンでは、窓口で予約券を販売した。
素朴なイメージと地産地消を大切にしながら、決していい加減な調整を行なわず、さまざまな具材と味を楽しめることから、評判は上がりにあがり、テレビ番組のランキングでも優勝は逃したものの、それに匹敵する評価を獲得した。もちろん私自身も、「Vサイン」を出した好印象の一品。
嘉例川駅は鹿児島県姶良郡隼人町嘉例川に位置する、竹林に囲まれた無人駅。駅の右隣には地区の共同施設があり、公民館に町の支所、そして簡易郵便局が入居するが、駅周辺は本当に静か。そういった駅に特急<はやとの風>が停車し、しかも5分前後の停車時間がある。この嘉例川駅は1903年の1月に開業したのだが、その時の駅舎がほぼ原型で今まで大切に保たれ、大隅横川の駅舎共々すでに築100年を経過した。その古い駅舎を「観光資源」に仕立て、観光客を呼び、駅弁の開発につながった・・ということである。
隼人町は近々、国分市や霧島町、横川町などと合併し、「霧島市」として再出発することが決まっている。「観光資源」である嘉例川駅舎は、資源維持のため、隼人町が買い取っている、とのこと。
鹿児島本線:川内駅 「べっぴんさん」(おべんとうの西原) ¥820

私がこの手の駅弁に手を出すのは珍しいと言えば珍しいのだが、川内駅の隠れた名物になった駅弁。「駅弁」というには開発の経緯がやや異なっている面もある感じが漂い、「川内駅の駅弁」と言うよりは、特急<つばめ>への積み込みを意識したものと言えようか。「つばめレディ」も車内オリジナルの「つばめ弁当」などを売り歩くものの、川内付近まで来ると売り切ってしまうのも当然で、積み込みの必要性が出てくるのだ。
私が特急<つばめ>に乗車した時に川内の少し手前で「何か食べるものありませんか?」と聞くと「そうですねえ、川内駅で駅弁を積み込むことができますが」という声で注文して購入しており、一口で言うなら「選択の自由がなく、やむを得ず購入した」という側面があるにはあるが、公認の「駅弁」でもあるし・・という気持ちから、「チャンスがあれば買おうかな?」という程度の気持ちは持っていた。
「積み込みの駅弁」というイメージが強いものの、川内駅ではホームにワゴンながら専用ブースを設けて販売していた。中身はさっぱり系のものが多いが、「幕の内」とも趣向が異なる、どこか不思議な感じで、かえって新鮮に感じた。モチロン「買ってよかった」と思えるだけの味はしている。
なお、川内と並んで駅弁販売駅となっている出水とも九州新幹線が停車するが、鹿児島中央からでも当面の終点となる新八代へは34〜46分で着いてしまう。それだけに「買っても食べる時間がない」というようなことになれば、駅弁の販売環境は厳しくなるだろうが、既にこの「べっぴんさん」は特急<リレーつばめ>の「ワゴンサービス」にて販売されるようになっている。しかし、<リレーつばめ>の所要時間も1時間40分程度となるため、その販売環境とて、楽なものではないであろう。
なお、社名は「川内駅構内営業」が正式社名。
鹿児島本線:西鹿児島(以下:「鹿児島中央」)駅 「とんこつ弁当」(わたなべ)


鹿児島中央駅の駅弁で一番有名な駅弁がこちらの「とんこつ弁当」。鹿児島は黒豚に代表されるように豚肉料理が特産となっているが、名前の通り大変こってりした肉が食べ応えのあるシロモノだ。
とんこつだから肉は骨付きなが、その骨を無理なく噛み砕けるほど軟らかくしてあり、かむ回数を重ねていくと、少ないご飯の量と思わせないほどの満腹感を味わうことができる。
鹿児島本線:鹿児島中央駅 「とりめし」(わたなべ)
「とんこつ弁当」ほどのインパクトや知名度はないものの、食べて見ると意外なほどうまいのがこの「とりめし」。北九州で多く見られる「かしわめし」に似ているが、鶏肉の調理の仕方の違いが、「かしわ」と「とり」の違いであろう。「とんこつ」と並んでこれもまた名物になりうるだけの価値があるはずなのに、外見だけではわからない(幕の内と共用?)デザインのハコが評価の落としどころ。
鹿児島本線は建設当初、現在の肥薩線ルート(八代〜人吉〜吉松〜嘉例川〜隼人〜鹿児島)で建設されて鹿児島へ到達した。そのためその当時はここにしか駅がなかったため、「鹿児島駅」が必然的にできた。行政機関などが近いことから、鹿児島駅、通称「鹿駅」もある程度の利用はあるが、圧倒的に賑わっているのはやはり「鹿児島中央駅」である。中央駅と言っても、大型の百貨店などがある鹿児島の都心、「いづろ」は両駅の中間付近にあり、線路は離れている上にトンネルで抜けるため全く見えず、この名称が相応しいかは難しいところ。
しかし、「鹿駅」の伝統と名称は西鹿児島駅(こちらの通称は「西駅」だった)に譲るわけにもいかず、かと言って新幹線が通ると「東西南北」の付く駅名(「東広島」は行政が広島県東広島市)は避けたい・・という意向もあってか、「鹿中央」として、今後の発展を支えることになったようである。
日豊本線:西都城駅 「かしわめし」(せとやま弁当) ¥720

西都城駅の代表駅弁。都城地区はかつてから養鶏が盛んだったそうで、どこの家庭でも鶏が飼われていたとか。そして来客や慶事の際に、その鶏を使用した料理でもてなすのが慣わしだった、とのこと。それを駅弁に仕立てて昭和30年に販売を開始したのがこれ。
「かしわめし」はどちらか言うと北九州や山口地区で散見されるシロモノであるが、大きく異なるのが鶏肉の調理方法で、前出の地区のシロモノに「そぼろ」系統の肉が多いのに対して、ここのは5枚の鶏肉をスライスしたものを載せているのが大きな特徴。「3色」構成は守りつつも、ノリを少なくしているのも、あまり見られないパターン。「かしわめし」としての味付けは基本に忠実だが、炊き込み御飯はニンジンをまぶしているのが特徴の1つ。
ボリュームもあって価格も比較的手ごろで、肉の弾力は北九州地区の「かしわめし」ではなかなか味わえない割に、露出度が低く、あまり有名になっていない「穴場」的な存在。もっと注目されて良い駅弁で、大いに利用してみたい一品。
日豊本線:西都城駅 「ゆかりめし」(せとやま弁当) ¥720

どこが「ゆかりめし」かと言うと、おにぎり風に仕立ててあるご飯が、ゆかりと青菜をまぜたご飯で握られているところから。駅弁に使われるご飯でこのような具材を使っているのはあまり例が無く、貴重なシロモノ。それ以外に大きな特徴があるわけではないが、言うならば変哲のない「幕の内」を、ちょっと一捻りするだけで、あまり開発費をかけないで「名物駅弁」になろうかと言うところまでに仕立てることができる、ローコストなアイデア商品と言うところか。
これとは別に普通の「幕の内」も販売しているが、充分代替の効く内容。旅人が何度も立ち寄れる場所ではないので、現地で見つけたらぜひ購入しておこう。
日豊本線:西都城駅 「栗めし」(せとやま弁当) ¥720


西都城駅の「栗めし」。人吉のように容器にはこだわっていないものの、コンパクトな箱にオクラとタケノコを入れているのが特徴。「かしわめし」や「盆地の牛めし」の印象が強いせいか、何度も手は出ないが、一品一品丹念に調整してあることが、一口食べるだけで実感できる駅弁。この手の駅弁にしては珍しく卵焼きにカマボコが入っているのも特徴と言えようか。
日豊本線:西都城駅 「盆地の牛めし」(せとやま弁当) ¥840


西都城駅のもう1つの名物でありながら、ここ最近マボロシ状態が続いていた、実力派駅弁。ご飯の上に地元産の壽牛をスライスし、オクラや錦糸卵を載せたシロモノ。肉の風味と歯ごたえはバツグン、「数に限りがあり、無制限には作れない」と言うような材料を使用する割には、この系統の駅弁で¥840という嬉しい価格を実現している。
実はこの駅弁、例のBSE騒動の影響からか、ここ数年販売が休止されており、買う機会に恵まれなかった駅弁ファンも多かったらしい。しかし店員さんによると、「2004年の11月頃から販売を再開した」とのことで、現在では「新 牛めし」として販売しているようだ。
西都城の駅弁はどれを取っても「折り紙つき」のシロモノだが、少しツライのが「時間を外すと手に入りにくい」こと。朝は8時開店で、この時間は比較的手に入りやすいが、昼以降17時の閉店までは予約が無難だと思う。何度も言うが、この地方を訪れて買い逃すと再訪が大変なので、行くのであれば確実にゲットして苦労の分だけ、よだれの垂れる味を味わいたいものである。なお、「せとやま弁当」さんは最近、都城駅の近くに、店舗を設けて営業を開始したとのこと(もちろん西都城駅前の店舗も健在)。
駅や列車の衰退は一向に止まらず、別の業者が入っていた都城駅においては、東京や阪神地区からのブルートレイン<富士><彗星>が、博多〜宮崎を肥薩線・吉都線経由で結んだ特急<おおよど>、急行<えびの>も無くなった。それとともに2002年頃に撤退してしまい、今では「キヨスク」でわずかな数量の「せとやま弁当」の「かしわめし」などが販売される程度。都城を始めとした宮崎地方はかつて、新婚旅行のメッカとして栄えたらしく、街の中心がやや西都城の方が近いこともあって、1981年に早々と高架化。ところが利用客は都城の3分の1ほどしかおらず、1987年の志布志線の廃止などで、駅前のタクシーの運転手も「都城は、寂れました」と嘆く。
西都城も例外ではなく、かつてはホーム立ち売りだったそうだが、駅構内の大きな売店もシャッターが降りて久しく、現在では駅を出て右側の店舗で販売している(但し、電話で予約すれば、西都城駅のホームまで持って来てくれるとのこと)。駅は委託になって広いコンコースを持て余すどころか、封鎖空間も大きく、2005年には「キヨスク」が撤退。
東京や関西、博多への長距離列車なき後は、鹿児島中央と宮崎を結ぶ特急<きりしま>が、「L特急」の看板を掲げて走るが、車販の需要には限りがあり、<にちりん><ひゅうが>共々車販が降りてしまった。
但し、「せとやま弁当」さん自身は「都城に根付いた弁当屋」として盛業のようで、店舗も明るいし、一見しておいしそうなシロモノを作っていることがよくわかる。